かすかべ時遊帳

かすかびあんの時遊で気ままなブログです。

付「倉松落大口逆除碑」"堅固比なし"と喜びあふれ‼️

スポンサーリンク

…前回の続き

付(つけたり)倉松落大口逆除之碑くらまつおとしおおくちさかよけのひ)について、なお、「付」(つけたり)とは付属のこと。

こちらも「めがね橋」の付(つけたリ)として今回、県指定の文化財になりました。

 

 

倉松落と新田開発

f:id:takejiisan:20190412112350j:image

めがね橋の下の水路は、倉松落と呼ばれ、新田開発が盛んな江戸時代前期、万治2年(1659年)に堀割られたとされる排水路です。

幸手領杉戸地域の排水を集め、現春日部市八丁目(旧八丁目村)地先で大落古利根川(葛西用水)に落としました。

 近世初頭には江戸湾に注いでいた利根川本流が16世紀末から17世紀中ごろにかけて河口を銚子へ移され(「利根川東遷」)、埼玉東部低地にはそれまでの利根川本流の氾濫原に広大な沼沢地が残されました。 

「利根川東遷」とは、

↓↓

利根川の東遷 | 利根川上流河川事務所 | 国土交通省 関東地方整備局

 

利根川旧河道と中川の自然堤防村落にはさまれた幸手領の低湿地帯は、倉松落など数々の排水路(落堀)が開削され、大規模かつ集中的な新田開発が行われました。

水田化にはまず池沼の水抜きが必要で、ついで灌漑用水の供給が必要になります。

江戸時代、万治3年(1660年)には、関東郡代伊奈忠克が埼玉郡本川俣(羽生市)の利根川に圦樋(いりひ)を設け、幸手領に用水を導入。これは幸手領用水と呼ばれ、後に10か領、300村を潤したと言われています。その後、今も埼玉東部地域、約6000haを潤す「葛西用水」(利根川の旧河道を利用)へ統合されました。

 

基盤整備で収穫量が飛躍的に増加

幸手領では、寛永年間(1624年~1643年)から元禄年間(1688年~1703年)までの50年間に、年貢高が1.5倍~2倍余りに増加した村々が続出したと言われています。また、元禄時代の記録には、幸手領の新田村として新たに12の新田が記載されています。

このことから幸手領がいかに新田開発の盛んな地域であったかがわかります。これは用排水の基盤整備でより一層の新田開発が進み、結果として耕地が安定化したことを示しています。

平坦地の用排水の利水計画は、用水、排水ともに深い相関関係をもっており、排水路の重要性は用水路に勝るとも劣りません。

倉松落は、不毛の氾濫原を豊かな穀倉地帯へ変貌させた、用・排水網の一角を占める重要な存在であったのです。

f:id:takejiisan:20190412114020j:image

広々と広がる農地、国道16号の向こうにも農地が広がっています。

度重なる洪水被害と樋門の設置

しかし、利根川や荒川の洪水が古利根川を経て逆流し、たびたび倉松落沿線の田を水没させました。

そのため江戸末期に逆流防止樋門(木造)が設けられましたが、明治23年(1890年)8月の大洪水で大破してしまい、翌年、レンガで再築したのが現在の「めがね橋」です。 

工期は3ヶ月と短期間で、当時としては莫大な3,830円の工費は地主への課金、寄付金募集、県の補助金等で賄われました。

 

「 堅固比なし」と恒久化樋門に地域の人々の喜びが

樋門のかたわらにある「竣工記念碑」(県指定文化財)の碑文には、恒久的な材料で樋門が再築されたことへの地域の人々の喜びがあふれています。

f:id:takejiisan:20190412113126j:image

この石碑は、明治25年(1892)3月建立。撰文は畠山健、書は堀口準太郎。碑文はこの当時にしては珍しく、漢字かな混じり文(草書体)。

f:id:takejiisan:20190412112846j:image

f:id:takejiisan:20190412113359j:image

所々しか読めませんが、碑文には、総工事費3,830円をかけ、明治24年3月に起工し、同年6月に大口逆除を竣工と記されているそうです。

また、「瓦石を畳み膠土を塗りて堅固比なし」とも記されています。この部分は、

f:id:takejiisan:20190412113453j:image

瓦石は煉瓦(レンガ)、膠土はモルタルのこと。「堅固比なし」に大口逆除を完成させた喜びと安堵感が表われています。

 

その後、この倉松落は、昭和8年(1933)から水位の高い大落古利根川(葛西用水)から水位の低い中川へ落し口を替える大掛かりな流路変更工事が行われ、新しい水路を倉松川、元の水路を旧倉松落(幸松川)と呼ぶようになりました。

 めがね橋から遊歩道を歩いて行くと、倉松公園の桜も満開でした。

f:id:takejiisan:20190412124359j:image

f:id:takejiisan:20190412124436j:image

公園には桜も

 

旧倉松落(幸松川)が大落古利根川に落とされる(合流)付近

 f:id:takejiisan:20190412125650j:image

お世辞にも綺麗とは言えませんね。

f:id:takejiisan:20190412124623j:image

大落古利根川に合流

対岸から見ると

 f:id:takejiisan:20190412124830j:image

 

 

 

参考文献(前回を含む)   

  • 独立行政法人水資源機構:『水ととも

  に』2009年5月号  NO.68   

  • 農山漁村文化協会:『ひとづくり風土記

  11・ふるさとの人と知恵 埼玉』1995年

  • 埼玉県教育委員会『埼玉県の近代化遺

  産』1996年

  • 是永定美著:『利根川・人と技術文化』(雄山閣出版)  所収「利根川の煉瓦造水門」
利根川―人と技術文化

利根川―人と技術文化

 
  • 伊東 孝著:「日本の近代化遺産」 岩波新書(新赤版)695 2000年10月20日発行
日本の近代化遺産―新しい文化財と地域の活性化 (岩波新書)

日本の近代化遺産―新しい文化財と地域の活性化 (岩波新書)